結びのことば

 

以上をもちまして、私の申し上げたい合掌精神についてのお話は、一応おわったわけです・しかし、衷心から願うことは、単にその精神のご理解にとどまらず、その精神を日常の上に実践していただくことです。 

 

実践の上では、あまり根源的な精神なぞを一々考慮せずに、むしろ一応は理解したことも今は忘れ果てて、習慣的に合掌できるようになるのを理想とします。南泉禅師も【平常心是れ道びょうじょうしんこれどう】と言われて、余り思慮分別にわたるより、むしろ無造作に言行するところにこそ大道があると言われております。合掌もこんな風に無造作にできるようになりたいものです。 

 

さて、今回はとかく禅の言葉や例話が出過ぎて恐縮に存じています。合掌ということそれ自体が宗教的なものを内在しておるせいもあり、又、私自身が禅の修行を身につけている関係もあり、それは止むを得ぬ仕儀ではありましたが、お聞き苦しいことであったとお詫びいたします。 

 

この小冊子をお読みくださった方々は、どうぞあまり宗教だの宗派などのということを機になさらずに、正しく・楽しく・仲よく、自己の人生を味わいながら、住みよい世界楽土を建設したいという我々の合掌運動をご理解下され、ご協力お願いしたいと存じまず。 

 

それにはまず各自が、何時何処でも、何事にも何物にも合掌する習慣をつけることが、第一でございます。 

 

かつて、第一編の『数息観すすめ』で、講習会に於ける食事についてお話した時に、合掌して箸をとるという意味のことを申しましたが、あのときは別になぜ合掌するかはについては触れませんでした。私どもは、講習会でなくとも、食事の前後には合掌するように習慣づけられております。 

 

その意味は皆様におかれてはもうご理解がいただけたことと存じますが、よし意味が判らなくとも、ご家庭でご老人やお子様方も、みな合掌してから箸をとられたら、大変和やかな家風が出来上がるに違いありません。何事も手近なところから実行に移すのが肝心です。 

 

食事の時に合掌することが習慣づけられたら、今度は他にものを頼んだり物を受け取ったりする時に、感謝の言葉をはくと同時に合掌したら、さらにその念を深めることができます。又行きあったり別れたりする時にお互いに合掌すると、一層親愛感を深めるものです。 

 

これも初めのうちは、なんだかてれ臭い気もしますが、習慣になれば何でもありません。握手という挨拶の仕方がありますが、あれも習慣にならねば、照れ臭いものでしょう。あの握手なぞも、考えてみれば、合掌の精神にかなっていることで、第一相手の掌とこちらの掌を握るのですから、文字時通りの合掌でもあります。         

 

仏教には、古来、片手合掌という合掌仕方さえもある位で、左右の掌を合すばかりが合掌の姿ではありません。片手に荷物を持って居れば、自然片手合掌ともなるでしょうし、両掌が塞がっておれば、目を合わせただけでも、十分に合掌することになるものです。 

 

どうか皆さん、一人でも多く、できれば世界中の人々が皆ことごとく、合掌し合うような世界が一日でも早く実現するように、まごころから合掌しようではありませんか!                              

 

                                                                                        (完)             

 

 

※お断り:この文章は、耕雲庵立田英山老師の著書『合掌の精神』を発行責任者の許可を得てワード入力したものですが、パソコン画面で読みやすいように35行ほどで段落を入れております。原本冊子とは段落の違いがありますのでご承知願います。

 

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            耕雲庵 立田英山 老師

著者略歴 

 

耕雲庵立田英山  人間禅第一世総裁  俳号:幽石

明治26年7月6日東京都本所区生~昭和54421日没  俗名 立田 鉄二

学歴 東京府立第三中学校 第二高等学校二部乙 東京帝国大学理学部動物学科卒

法歴 松島瑞巌寺盤竜老師に参じて見性。

   両忘庵釈宗活老師に参じて大事畢了、その法を嗣ぐ。

   昭和3年:両忘協会師家に任じられ爾来50年大法挙揚

   昭和23年:人間禅教団を創立し、推されて第一世総裁に就任

   昭和44年:総裁を退き名誉総裁に就任

職歴 中央大学予科教授、日本医科大学予科教授

著書:『生物科学概論』『十牛図講話』『新編碧巌集講話』『臨済録新講』

『数息観のすすめ』 『合掌の精神』 『観音経講話』『新編無門関提唱』

『般若心経講話』 

俳句集:『句津籠』『続句津籠』『続々句津籠』

写真集:『我れここに今かく在りぬ』『花あいしらず』

 

 

 

人間禅叢書第2編 『合掌の精神』

昭和31年1月15日 第1版発行

 

昭和44年128日 第2版発行

 

平成22年1月31日 第3版発行

 

発行所 宗教法人 人間禅

 

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